歯周病と全身疾患

今までは歯周病は口の中だけの病気と考えられてきました。近年、歯周病が全身にもたらす影響と全身が歯周病に与える影響についての研究が進められています。それに伴って、その関係性が分かってきました。ここでは、歯周病と特に関連性の深い5つの症状について説明します。

①糖尿病

糖尿病は、インスリン(血糖を下げるホルモン)が足りなくなったり、うまく働かなくなることで高血糖が続く疾患です。この状態が続くと、様々な合併症が起きやすいと言われています。歯周病は糖尿病の合併症として捉えられています。糖尿病の人は、糖尿病でない人に比べて歯周病になるリスクが高いという報告や、歯周病の治療によって歯ぐきの炎症が改善すると、インスリンが働きやすい状態になって、血糖値が改善する可能性があるという報告があります。

②心疾患

心疾患は、食生活や運動、ストレスなどの積み重ねが引き起こす生活習慣病の一つです。歯周病の人は、心疾患を発症するリスクが高いことが報告されています。また、歯周病が重度であればあるほど、その発症のリスクが高くなるとも言われています。これは、歯周病によって歯肉で発生した炎症性物質が血流を介して心臓血管にも影響を及ぼすためと考えられています。

③早期低体重児出産

妊娠中の女性で歯周病の人は、そうでない人に比べて低体重児出産や早産する確率が高いと言われています。妊娠中の女性は、つわりによって口腔清掃が不良になりやすいく、歯周病になりやすくなります。歯周病による炎症性物質が胎児にも影響するため、早期低体重児出産の確率が高まると考えられています。

④誤嚥性肺炎

肺や気管は、咳などの生理的な反応することによって守られています。しかし、生理的機能が低下すると、自らの唾液や食べ物が誤って肺に入り、肺炎になってしまいます。これを誤嚥性肺炎といい、唾液中に含まれる細菌が主な原因です。歯周病菌は肺炎の原因となるものが多いので、高齢、認知症、脳血管障害、手術後など、食物の飲み込みを上手く行えない人は、特に注意する必要があります。

⑤骨粗鬆症

骨粗鬆症は、長年の生活習慣などが原因で骨が弱くなる病気です。全身的に骨が弱くなると、歯を支える歯周組織にも影響があると考えられています。一方で、歯周病は歯を支える歯ぐきを破壊する病気です。歯槽骨が弱くなると歯周組織の破壊が進行しやすくなるため、骨粗鬆症は歯周病を進行させる原因のひとつと考えられています。